小説批評 ―精密採点books―

本の感想を書き、批評をするレビューブログです。

『悪人』 吉田修一 86点

『悪人』2007年出版。九州を舞台に出会い系で会った女性を殺害してしまった地方の青年とその周りの人々を描く群像劇。一体”悪人”は誰なのか?毎日出版文化賞受賞。映画化作品。

 

『君の膵臓を食べたい』 住野よる 10点

『君の膵臓を食べたい』2015年出版。
内気な少年と膵臓に病を抱える少女との交流を描く。本屋大賞2位、実写映画化、アニメ映画化もされている。

 もうはっきり言ってしまうがこの小説は”クソ”である。所謂『恋空』の系列である。人が死んじゃうだけの小説である。不自然に難しい単語を使った文章、時代設定の不十分さ、主人公の名前の無意味な伏線、王道を崩したかったのであろうか、取ってつけたようなヒロインの死亡。挙げればきりがないが、ちゃんとした小説を読む人間が読んだら読むに堪えないものである。

 しかしながらこの小説が爆発的にヒットした要因はやはりタイトルと本の装丁、人が死んじゃう話という、いつの時代もヒットする王道なストーリーによるものだろう。タイトルで釣って、読みやすいベタなストーリーと申し訳程度の伏線で手軽な読者体験をさせる。内容はともかく、商業的には大成功といえる。また、これ以降ボーイミッツガールでタイトルが奇抜な文章系のタイトルの本が増え、後発の作品群に(良くも悪くも)影響を与えている。

 なんとか一つ良かった点を上げるなら主人公の名前を【】で表す演出だろうか。アイデアとしては悪くはないのではないだろうか。まあ、それすらも矛盾があったんだけど。